エロライトノベルの傑作「学園秘芸帳」

 これまで美少女文庫全作品をはじめ、数多くのエロライトノベル*1を読んできた私ですが、もしその中から1作品挙げろと言われれば、迷いなく「学園秘芸帳」を挙げます。


縛って!!正義の女王様―学園秘芸帳〈1〉 (学園秘芸帳 (1))

縛って!!正義の女王様―学園秘芸帳〈1〉 (学園秘芸帳 (1))


 著者は先日のこの美少女文庫がすごい! Best of 2007で大賞に選出された「ボクだけのせんせい姉妹」の著者でもある羽沢向一。この人、実は以前別ペンネームで活動*2しており、経歴十数年にもなるベテランだったりします。1999年に刊行された「学園秘芸帳」は、そんな「羽沢向一」のデビュー作に当たります。


 主人公は抜群のプロポーションを持つ女子高生・日乃優希。彼女には、裏世界に伝わる一子相伝の縄術・日乃正統流の使い手という秘密がありました。正義感にあふれる彼女は、正義の味方・黒流星として、夜な夜な近所の悪を縄術で懲らしめていました。

 そんなある日、優希は悪の縄術・辣流外法縄を使う少年・縄王の罠にかかり、捕らえられます。自分に従えという縄王の要求を拒絶した優希は、彼に陵辱された上、自分では外すことのできない縄の拘束を全身に施されてしまいます。それは、縄術を使うと全身に快感が走り、しかも自分では最後まで達することができない、という恐ろしいものでした。

 制服の下に縄を隠し、快感に耐えながらもなんとか登校する優希。そこに、縄王の部下が襲撃をかけてきます。優希は苦戦しながらもなんとか撃退しますが、親友の恵未に縄で縛られた体を見られてしまいます。

 自分が黒流星だということや、縄王に辱めを受けたこと……すべてを恵未に告白する優希。彼女に拒絶されると思い、優希は絶望しますが、恵未はそんな優希を優しく受け容れ、彼女の身体を慰めます。そうして身も心も結ばれた二人は、晴れて恋人同士となります。

 一方、部下を倒された縄王は、恵未と、優希・恵未のクラスの担任、早苗を人質に取ります。祖父の特訓によって、縄術を使いこなせるまでに復活した優希は、決戦の舞台――学園へと向かいます。そこで彼女を待っていたのは、優希同様に緊縛された恵未と早苗でした。果たして優希は、恵未と早苗を助け出し、縄王を倒すことができるのでしょうか――というのが、1巻のあらすじです。


 SM(縄)&レズ、というだけでも十分濃いのに、そこにさらにバトル&ファンタジーが加わって、もうなんだかよくわからないことになってます。単にエロいだけでなく、優希VS縄王のバトルものとしても十分面白い。ラストの展開などは「どこの忍法帖だ」という感じで、手に汗握ること必至です。

 キャラクターも立ってます。普段は謹厳実直を絵に描いたような性格なのに、エッチでは途端に受け身になる優希。逆に普段は普通の女子高生なのに、エッチでは優希をリードする恵未(貧乳&おっぱい星人)。そして亡くなった優希の姉に淡い想いを寄せ、その妹に面影を重ねる早苗先生(眼鏡&巨乳)。この3人だけでなく、各巻で登場する裏世界の武闘家たちもことごとく個性的で、とにかく読んでいて飽きるということがありません。

 今、各巻と書きましたが、この作品(というか刊行元の青心社文庫自体、シリーズ化する作品が多いのですが)はエロライトノベルには珍しく、全5巻で完結となっています。2巻では針使いが、3巻では虫使いが優希たちを襲います。これらメインの敵以外にも、たくさんのトンデモ武術家たちが登場し、優希たちと激闘を繰り広げるのです。クライマックスとなる4、5巻では、それまで以上に衝撃的で「熱い」展開が描かれ、怒濤の終局へと突き進んでいきます。優希と恵未、二人の関係がどこへ行き着くのか、ぜひその目でたしかめてほしいと思います。

 私のエロライトノベルの評価軸のひとつに「エロさと話のおもしろさの両立」というのがあるのですが、その観点から見れば「学園秘芸帳」はこれまで読んできた作品の中でトップクラスです。唯一残念なのが、4巻までと5巻とでイラストが変わってしまった点ですが、そこにさえ目をつぶれば、本作は間違いなくエロライトノベルの傑作のひとつと言えるでしょう。エロライトノベル愛好家(何人いるんだよ)であれば、一度は手にとってほしい作品です。


許して・南海のお嬢様―学園秘芸帳〈2〉 (学園秘芸帳 (2))

許して・南海のお嬢様―学園秘芸帳〈2〉 (学園秘芸帳 (2))

愛して〓心のお姫様 (学園秘芸帳 (3))

愛して〓心のお姫様 (学園秘芸帳 (3))

教えて闇の女騎士―学園秘芸帳〈4〉 (学園秘芸帳 (4))

教えて闇の女騎士―学園秘芸帳〈4〉 (学園秘芸帳 (4))

[rakuten:book:11199057:detail]



余談その1

 そんなわけで羽沢向一は、エロ抜きでも十分面白い話を書ける一人だと個人的には思ったりしてます。近刊の「退魔拳士キリカ」なんかも、キャラ立ちとオチのぶっ飛び具合は「学園秘芸帳」に決して負けてないですし。5月創刊の一迅社文庫では、わかつきひかるみかづき紅月といったエロライトノベル出身作家を早々に起用するようですが、この勢いでラブコメ系以外のエロライトノベル作家を起用してくれたりするとおもしろいのになーと思ったり。


余談その2

 そもそも「学園秘芸帳」が刊行されている青心社文庫自体かなり変なレーベルで、今でこそエロ小説がメインになっているものの、初期にはホラーやらクトゥルーやらを出してたり、「ポリフォニカ黒」の大迫純一が書いてたり、「邪神ハンター」という、クトゥルー触手エロで挿絵が士郎正宗(しかも本文含め全てフルカラー)というとんでもない作品があったりと、あさればいろいろ出てきてなかなかおもしろいです。ちなみに書店で探す場合は帯の背の部分にいやらしい感じの言葉(「らめぇ」「ぬるぬるっ」とか)があるものを目印にすると良いです(笑)。

*1:個人的にはジュブナイルポルノより身も蓋もないこっちの表現のほうが好きだったり。

*2:美少女文庫の前身ともいえるナポレオンXXノベルズでは市川光紀名義で、さらにそれ以前には、今はなきログアウト冒険文庫(要はエロなし)で執筆していたことが確認されています(人魚蛟司名義)。