いくつかの補足と、誤解への返答

 これまでの流れのまとめ。

 これを踏まえて以下本文。


 まず、

このライトノベルがすごい!』の投票者に中高生はどれほど含まれているのでしょうか?

 についてですが、少なくとも『このラノ2007』では投票者の半数以上は20歳未満です。これは『このラノ2007』本誌の中できちんと明記されています。ですから、

秋山の勝手な想像では、投票者の半数以上は20歳以上、つまり中高生に含まれない層だと思います。

 については、それは違う、ということを、まずは書いておきます。


 さて、『このライトノベルがすごい!』のランキングでは、投票者は大きく3つのグループに分かれています。その中に、作家や書評家、ライトノベル系サイト管理人からなる「協力者」というグループがあり、ここに属する人たちは他のグループより持ち点が高くなっています。ですから単純に「このラノのランキングで上位に入った作品=ライトノベルのメイン読者が好む作品」とは限りません。もしその図式が成り立っているなら、『このラノ』のランキングは売上のランキングに近いものになっているはずです。

 一方、上に挙げた3つのグループの中の、「モニター」という層は、最初から年齢が12〜18歳と定められています。『このラノ2007』では、グループごとに支持を受けた作品のベスト3が掲載されており、「モニター」は『キノの旅』『涼宮ハルヒ』『戯言シリーズ』などの、よく売れている作品が名を連ねています。一方で本文中には、この年1位だった『狼と香辛料』への「モニター」からの投票はゼロだった、という記述もあります。このことから、「モニター」の支持する作品は売れている作品、翻って、売れている作品は主に「モニター」のような中高生に受けている、と判断しました。*2

 ちなみに『このライトノベルがすごい!』を挙げたのは、あくまで例のひとつにすぎません。たとえば私は以前にもライトノベル消費者層の構造に関するエントリを書いたことがあるのですが、それに対して以下のような反応を頂いたことがあります。

 こうしたさまざまな状況証拠を積み重ねた結果、私の中で「現在、ライトノベルの主要読者は中高生である」という結論に至っているわけです。

 もっとも、これらは所詮状況証拠であり、いくら積み重ねても、100%間違いなくそうだ、と言えるようなものではありません。しかし、絶対確実にそうだと言えることしかベースにできないのであれば、議論など成り立ちようもありません。もちろん、何の根拠もない主観や偏見でしかものを言わないこともまた、話を前には進ませません。少なくとも私は、こうした状況証拠を重ねた結果、自分の中である程度の確度をもって言えると判断した(=自分の中で、これといった反論が見つからない)ときのみ、こうして文章にするようにしています。

 なお、私が表に出ないデータを元に話をしているのではないか、という話があるようですが、仮にそうしたデータを知っていたとしても、根拠を求められたときに表沙汰に出来ないような根拠しか持っていないようであれば、それは単なる茶飲み話、戯言の類に過ぎないと私は思っています。こうして表に出す以上、だれもがアクセスできる、あるいは表にできる知識や情報のみをもって論を組み立てるべきであり、私自身、これまでもこれからもそうしていくつもりです。


 さてその後の、秋山さんががっかりされたくだりに関しては、がっかりされたということにむしろ私のほうが驚きというか、戸惑いを感じるところです。

 私は『ライトノベル「超」入門』の著者ではありません。ゆえにそこに書かれた言葉は、いくら私が同意を示していても、私の言葉そのものではありません。私の意見というのは、あくまでこのブログ上で書いたものであり、それがすべてです。ですから、私と話をするにあたっては、私の書いたことだけ読んでいただければいいのであって、極端な話『ライトノベル「超」入門』を読んでいる必要はないのです。*3

 たしかに私は「新城氏の主張に同意してはいるものの、それそのものを己の論拠としているわけではありません」と書きましたが、そもそも私が新城氏の主張にどの程度同意しているかというのが、私と論を交わす上でそれほど重要なことでしょうか。私の考えについては、間違いなくエントリ内に記載されているわけですから、それをきちんと読んでいただければ、新城氏の意見とどこが共通していて、どこが異なっているかというのは、自ずとわかるはずです。

 秋山さんは「私に合わせた」と仰っていますが、私にしてみれば、私の言葉に真剣に向き合っていただけてはいなかった、ということを間接的に表明されたことに等しく、非常に残念に感じるところです。


 最後に。

 秋山さんは私の考えを、

ライトノベルレーベルから刊行されている。

ライトノベルという手法を用いて書かれ、中高生に受け入れられて、支持されている。

 このようにまとめていますが、これは違います。

 私が先のエントリで書いたことを再度掲載します。

 ゆえに私は、基本的に「ライトノベルレーベル」から刊行される作品を「ライトノベル(作品)」、それらの主な読者を「ライトノベル(の中心)読者」と規定しています。この「読者」が読む範囲は、現在のところ「作品(群)」とほぼ一致しています。もちろん中にはそれ以外の作品を読む読者も数多くいると思いますが、その影響が何らかの形で表れることは基本的にありません。ただ中には、前々回に例として挙げた「マリみて」や「戯言シリーズ」など、例外的に「ライトノベル読者」からの強い支持を受けている「ライトノベルレーベル以外の作品」もあり、それらは特例としてライトノベルに含めても構わないだろう、というのが私の考え方です。

 上についてはたしかにその通りです。しかし下については、「ライトノベルという手法を用いて書かれ」とも、「中高生に受け入れられて、支持されている」とも書いていません。

 もし、同じ形式に則って、私が考えるライトノベルの範囲を言語化するなら、

ライトノベルレーベルから刊行されている。

ライトノベル以外のレーベルから刊行されていても、ライトノベルの中心読者(現在では中高生)に強く支持されている。

 ということになるでしょうか。


 秋山さん自身は、個人の定義において『図書館戦争』をライトノベルとはしておらず、最初のエントリにおいて『図書館戦争』をライトノベルとしたのは、「取り上げて紹介するため」とのこと。「ライトノベルとは何か」という、根源的な問題について話していたつもりの私としては、これもまたびっくりor戸惑ったところであり(秋山さんの言葉を借りるなら「だったら、それを最初に言っておいてくれよ、みたいな」)、そんな安易な理由でライトノベルに含めたり含めなかったりするのは、いちライトノベル好きとしてひと言もの申しておきたい気持ちもあるのですが、そうするといよいよ不毛な言い争いになりそうなので、ここではそういう思いがある、ということだけ表明して、締めとさせていただきます。

*1:このエントリに関しては、知人であることを妙な形で表明して、読み手に変な印象を植えつけるのは勘弁して欲しい、とだけ。多少は仕方ないにしても、必要以上に仲間内感を出して他人を排除するのは私の本意ではないので。私自身は、このブログに書くことは何であろうと、知人からここを初めて読む人にまで広く向けて書いているつもりです。

*2:なお、『このラノ』のランキングは毎年こちらの方が分析されており、昨年の結果を見る限りでは、「一般層の好きな作品≒売れている作品」と言えるかと思います。対する「マニア層」は、「協力者」を中心とする20歳以上の読者と考えられるので、「一般層」の中心を占めるのは、投票者の残り半数である十代の読者、と見てもさほど無理はないのではないかと思います。

*3:もちろん内容がそれを要求していれば話は別ですが、今回においては、『「超」入門』の扱いはあくまで参考資料程度であり、読まなくてもついて行けるように書いているつもりです。