ライトノベルのタイトルロゴに使われているフォント(2010年5月/ファミ通文庫)

 マンガやライトノベルのタイトルロゴというのは、大体デザイナーが作っているものですが、全くのゼロから作っているものばかりではありません。大なり小なり加工してあっても、大本には何らかのフォントが使われていることも多いです。

 では実際のところ、どういう書体が元になっているのか。今回は、それを解説してみたいと思います。

 この手のネタだとゆず屋さんが同人誌『書体の研究』でやってる「ろごたいぷっ!」が有名ですが、こちらはライトノベルに限定し、網羅的にやるつもりです。そうすることで全体の傾向なんかも見えてくるのではないかと。

 では早速、発売されたばかりのファミ通文庫2010年5月の新刊を例に解説していきます。

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

 「ココロコネクト」の部分については元になったものがあるのかもしれませんが、ここまで加工してるとゼロから作ったのともはやそんなに変わらないので、オリジナルということで。「キズランダム」は払いの部分がナナメ45度のラインになってるのを見てはいはいギガG、と思ったら違ってて俺涙目。正解はアドビのロゴカットなる書体でした。初めて聞いたよ……。

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc5 (ファミ通文庫)

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc5 (ファミ通文庫)

 イラストで隠れて半ば見えなくなってますが、背景に縦書きで入っているタイトルに使われているのはモリサワ秀英3号。太さはそれほど太くないてことでEBくらい? 明朝体にはないうねりが個人的にも好きなフォントです。ちなみにこのフォントはかなのみのフォントなので、「世界」の部分には当然別の書体が使われているはずですがさすがにこれだけじゃわかりません(笑)。

(6/1追記)

twitterでご指摘いただいたところ、「世界」の部分はリュウミンではないか、とのことです。

彼女は戦争妖精 小詩篇2 (ファミ通文庫)

彼女は戦争妖精 小詩篇2 (ファミ通文庫)

 同じく背景に大きく入っているタイトルですが、長体&斜体&ほとんど漢字&バリバリ加工入りという利きフォント泣かせのロゴ。オーソドックスに「彼女は」「妖精」がリュウミン、「戦争」がゴシックMB101(ともにモリサワ)ではないかと思うんですが……。この2つは自分も両方持っているので、機会を見つけて再現できるかどうか確認してみようと思います。小さいほうのロゴについてはまた別の機会に。

くあっどぴゅあ (ファミ通文庫)

くあっどぴゅあ (ファミ通文庫)

 かなり特徴的なかなのロゴ。こういうのは割とすぐ見つかることが多いのですが、このロゴはなかなかのくせ者。2回出てくる「あ」や「ど」なんかはダイナコムウェアの綜藝体に非常に近いのですが、ほかが全然違う。その2つにしても結構アレンジしているし……。いろいろな書体を参考にしている様子はありますが、ここまでくると、ほぼオリジナルといっていいのではないかと思います。ぱっと見の印象に反して、手の込んでいるロゴです。

キバセン! (ファミ通文庫)

キバセン! (ファミ通文庫)

 特徴の少ないカナ4文字(=ヒントが少ない)ロゴということで苦戦するかと思いきや、「セ」の左下が欠けているのを見つけて一気に解決。こういう特徴を持っているフォントといえばモリサワはせトッポ。ロゴ化するにあたって細かなアレンジを加えていますが、元にしているのは間違いないのではないかと思います。

 利きフォントをやるときには鍵になる文字というのがあって、ひらがなの「な」や「の」があると割と簡単に特定できます。この作品の場合「な」も「の」も含まれているので、一般的な明朝体であってもそれほど難易度は高くありません。正解はアドビの小塚明朝Illustratorをはじめとするアドビの製品に標準でバンドルされているので、見たことがある人も多いのではないかと思います。


 タイトルがほぼそのまま原作のロゴな『モンスターハンター 閃光の狩人2』はパスで。ご了承をば。



 調べが中途半端なところも多々ありますが、そこはいちフォント好きに過ぎない人間一人での調査の限界ということでご了承いただければ。間違いの指摘はむしろありがたいので、コメントなりメールなりでいただければその都度反映させていきたいと思います。

 さて、タイトルに「2010年5月/ファミ通文庫」と書いてあるあたりでお気づきの方もいるかもしれませんが、この記事、今後シリーズ化していこうかと思っています。twitterでは「やったら死ぬ」とpostしたのですが、実際やってみるとやってやれないこともなさそう*1だったので、なんとか続けてみようかと。それに何よりも、やってて非常に楽しかったので。

 とりあえず明日発売の角川スニーカー文庫HJ文庫については調べはついているので、それについては今回のような形で解説していくつもりです。その後に関しては私の気力が続く限りということで。よろしくおねがいします。

*1:シリーズが多いというライトノベルの特徴を考えると、続けていくうちに1回の負担が減ってくると考えられる