中にはアイデアにちょっと無理があると感じたものも

バスジャック

バスジャック

 7本の短・掌編からなる作品集。

 「(読者にしてみると)非現実的な要素を違和感なく内包した現実」を描いているという点では前作『となり町戦争』と同じだけれど、前作が徹底して「見えない戦争の空気感」を描いていたのに対し、今作は短編集ということもあってか「不思議な話」以上のものになりきれていない印象。文章もところどころ気になるところあり。とはいえ、長さ・内容ともにバリエーションに富んでおり、読んでいるうちに飽きたという感覚はない。

 もし7編のうちひとつを選ぶとしたらやはり表題作になるだろうと思う。バスジャックがスポーツ感覚で行われる世界の一幕は、背景が細かく設定されていることもあってユーモラスですらある。


 関連:

となり町戦争

となり町戦争