マブラヴオルタネイティヴを褒める(その1)

 というわけでようやくのマブラヴオルタ感想です。

 タイトルは「褒める」となっていますが、内容的には私の素直なプレイ感想であり、無理矢理褒めるとかいう意図はありません。批判的な点がないではないですが、私にとってはそれ以上に評価すべきだと思う点がたくさんありました。批判的な見方も多い(らしい)世間の評価に少し対抗してみる意味も込めて、こういうタイトルになった次第です。

 そんなわけで以下内容。当然突っ込んだ話もあれこれあるので未プレイの方はご注意を。




 まずはシナリオ以外の部分から。

 とにかく演出が素晴らしいのひと言。いちいち挙げていくときりがないので省略しますが、ひとつひとつのシーンが非常に印象深いものに仕上がっています。AGES*1の機能を最大限に生かした演出は、単にイベント絵を表示するのとは比較にならないほど物語に引き込む力が強く、何よりプレイしていて飽きません。特に戦闘シーンが非常に多いオルタでは、これがあるのとないのとでは作品の印象ががらりと変わっていたでしょう。このシステムの存在があったからこそ、この話が成り立ったのだ、といっても過言ではないと思います。

 ほかにも映画風の画面表示やAGES-ACSによる音響効果など、細かい部分にも手が入っているのが好印象。これら演出をを支える絵や音楽も、十分な質とシナリオの長さに合うだけの数が用意されているのは言うまでもありません。演出効果の高さという点では、テキストゲーム随一と言って間違いないでしょう。


 少し話は逸れますが、オルタの演出、というか表現手法は、物語作品を作るにあたってのある種の理想型であると思います。

 一般的に、ストーリーを描くための媒体は「映像」と「文章」のふたつに大別できます。映像作品は「動き」を表現するのに適していますが、人物の細かな心理を描いたりするのはやや困難です。文章作品では心理状態を文で細かく描くことが可能ですが、臨場感のある「動き」の表現には工夫が必要です。

 逆に言えばそれら困難な部分をどう乗り切るかに少なからず作品の出来がかかってくるわけですが、オルタはシステム面からこの問題を解消しました。文章による表現を基礎におきつつ、絵を自在に動かすことで、文での表現が難しい「動き」を同時に表現することが可能になったのです。いわば「いいとこ取り」なこのシステム、単純な表現の幅という意味では、他のあらゆる媒体よりも広いのではないでしょうか。

 演出の幅が広がれば、作品の幅が広がります。そして演出の幅を広げるのは「技術」です。シナリオの善し悪しというのは、結局のところ個人の「感性」に左右され、誰にでも真似できるわけではありません。一方「技術」は、時間さえかければ誰でもある程度のものは習得できます。最終的な作品の出来というものは、演出次第で大きく変わってきます。その意味で、感性によらない「技術」も、「感性」と同じかそれ以上に評価されていいのではないかと思います。


 あれこれ書いてきましたが、オルタがその演出抜きに語れる作品でないことは間違いありません。ただ単に文章を読み進めていくだけでは、この作品を十二分に楽しむことは出来ず、またそうして出した評価も正当なものとは言えないと思います。時間はかかりますが、OHPのスタッフルームにもあるように、ゆっくりじっくりと、できれば常時オートモードでプレイするのが理想的なプレイスタイルではないかと思います。


 といったあたりで次回、シナリオ編感想に続きます。