てっきり本で殴り合ったりするもんだと思ってました

図書館戦争

図書館戦争

 うーん、なんか書きたいことがいろいろあってそれを全部詰め込んだ結果どれもが中途半端になってしまった感じ。本を守って戦う人々の姿を描いたにしては「戦争」と呼べるほどの危機感がまるで感じられないし、言論の弾圧に関わる問題を描いたにしては設定や展開が大雑把にすぎる。単純にエンターテイメントとして楽しもうにもそのへんの瑕が気になってどうしても楽しめませんでした。

 何より問題なのは、登場人物たちから「本を守りたい!」という強い想いがほとんど感じられないこと。単に思想を守るだけならインターネットとかもあるはず*1なのに、ほかでもない「本」を守ろうとするからにはみんな本が大好きであるはずなのだ。なのに、そのへんの描写が全然なかったのは大きな問題だと思う。

 奇しくもあとがきで著者自身が書いてあるように、どうしても最後、月9ドラマ的なオチをつけないと気が済まないところがこの著者の限界という気がする。次も出たら多分一応買うけど、そろそろひと皮むけて欲しいところ。

*1:作中ではネットの存在に一切触れないことでかわそうとしているけれど、現実を下敷にし、かつ思想的な問題を取り上げている以上言及しないのはどうにも不自然。