影響力の指標について
ネット上での言及数や、同人誌即売会でのサークル数から影響力を考えると、美少女ゲームの影響力はそれほど大きくない、という意見。
んーと、そうではなくて、ネット上での言及*1や、同人誌即売会でのサークル数を「影響力」の基準に置いた場合、美少女ゲームは、市場規模と比較して特別に影響力が大きかったとは言えないのではないか、というのが私の意見です。
私の文章には「何に対する影響力か」という部分が抜けていたので補足しますと、ひと言で言えば「オタクコミュニティに対する影響力」です。要はオタクコミュニティの中で、美少女ゲームがどの程度共通言語として働いているか、ということです。私はそれをはかる目安を、ネット上でどれだけ言及されているか、同人活動はどの程度活発かといった、ユーザーからのレスポンスの強弱に求めたわけです。もちろん、そこに現れないユーザーの声は多かれ少なかれあるわけですが、ライトノベルと違って美少女ゲームのユーザーはオタクであることに自覚的な人々がユーザーの大半を占めるので、ネット上の言及や同人の活発さは影響力の指標としてある程度の有効性をもつのではないかと思います。
私が「影響力がある」と定義するのは
1.受け手の言及数が多いこと
2.他業種の作り手によるメディアミックス事例が多いこと
3.受け手でも作り手でもない、この場合だと「非オタク」からの言及数が多いこと
この3点の合計で、「なんとなく」考えています。
一方平和さんは、1について「ネット上での言及数や同人誌即売会でのサークル数から影響力を推測するアプローチは適切でない」と仰っていますが、私としては、ではなにをもって言及数の多寡を比較するのか、というのが気になるところです。私がネット上での言及&同人活動を影響力の指標としているのは、もうひとつにはこれらがそれぞれネット/非ネットにおける「(目に見える形での)コミュニケーション空間」の代表格だから、というのがあったりするので。
なお、コミケひとつで同人への影響力を計っていいのかということですが、コミケが他の追随を許さないほど大規模な日本最大の即売会であること、オールジャンルの即売会であること、全国各地から参加者が集まることなどを考えると、同人への影響力を計る指標としてはこれ以上のものはないと考えます。むしろ他の即売会の状況を必要以上に考慮に入れるといろいろズレが出てきてしまうのではないかと。
あと3についてなのですが、ライトノベルにおいては、それこそ関連本が出版されたり、新聞で取り上げられたりすることがそれに当てはまるのではないでしょうか。少なくともこのような観点においては、むしろ美少女ゲームよりライトノベルのほうが影響力は強いと言えるかと思います。
そもそもの「美少女ゲームの強い影響力」の根拠については「なんとなく」とのことですが、私としてはもう少し具体的な形でその根拠を示していただきたいところです。もともと私の方では、15日のエントリの「一時期の美少女ゲームが持ってた影響力」という発言から、特定の時期に起こったムーブメントのようなものが念頭にあって「影響力がある」と仰っていると考えていましたので。
(追記)
だんだんすれ違っているポイントがわかってきたような。私のいう「オタクコミュニティ」というのはあくまでユーザー間のコミュニケーションの場、というような意味であって、作り手側のこと(メディアミックスとか)は考慮に入れていないのですが、上記エントリを読む限りでは、平和さんはそれらも含めた「オタクコミュニティ」を想定しているのかな、とか。
で、
「03年頃から、市場規模はそれほどでもない美少女ゲーム業界が、よりメジャーな他業界(マンガ・アニメ)などに原作として顔を出すことが多くなっている(いた)こと。」
についてなのですが、こちらのデータを見る限り、アニメ化本数の多寡を基準とした、影響力が増加しはじめた(その変化が顕著になってきた)時期としては、ライトノベルよりも美少女ゲームのほうがやや先行していた、とは言えると思います。ここで、アニメ化本数の増加原因をここで言われている「アニメ放映本数の異常な増大を背景に、TVアニメ化の敷居が下がった」ことに求めるなら、両者の差はふたつのメディアの認知度――市場規模、ではなく――の差によって説明できます。*2で、両者の認知度の差についてなのですが、これについてはそもそもライトノベルという言葉が2004年後半のライトノベル本ブームによってようやく市民権を得てきたという事実などから説明はつくのではないかと。「美少女ゲーム」も世間的には全然一般的な言葉ではないし、世間的な意味でいうなら今はむしろ「ライトノベル」のほうが一般的な言葉かもしれませんが、当時の業界内部的に「ライトノベル」よりも「美少女ゲーム」というくくりのほうがメジャーだったという仮説はありかなと思います。
あくまで仮説の域を出ませんし、意見をすりあわせるにしてもこれ以上はネットでは労力に見合わないように思うので、私の方もこのあたりでいったん終了、ということにしたいと思います。メディアミックスを通じた影響力については、美少女ゲームもライトノベルも差はないんじゃないかなと思うのですが、この点についてもまた機会があれば、ということで。
このライトノベルがすごい! 2007
近日発売予定の『このライトノベルがすごい! 2007』ですが、制作に協力されている方々へはぼちぼち手元に本が届いているようで。
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どうせ採用されないだろうと1つだけ馬鹿なコメントを書いたら、それが採用されていました。本当は、本当は真面目なことも沢山書いたんだよー! ああ、もうだめだ・・・・・・。
reyoborozuki
『>馬鹿なコメント
その後にあるわたしのコメントはどうなるのでありますか(汗
すいません、そこの文章書いたの私です(汗)
昨年もジャンル別作品ガイドページで何本か紹介文を書いたのですが、今年はそれ以上にいろいろな形で文章を書いてまして。基本は「宇佐見尚也」名義のものがそれにあたるのですが、ほかにも一部、名前は出てないけど実は、という部分があります。巻頭のコメントページの本文もそのひとつで、キャラクター、作品それぞれ2/3くらいは私の手によるものです。なので「なんでやねん」と突っ込まれたら高確率で「ごめんなさい」と言うことになるので、そのあたりはお手柔らかに、ということで(笑)。
そんなわけで、今年度版『このラノ』については、かなりの部分中の人として関わっていたりします(とはいえ立場的には下っ端なので、あれこれ言及しにくい部分もあるんですが)。とりあえず一応の中の人としては、本を読んであれこれ盛り上がってもらえればと願いつつ、すでに手元にある方々には、正式な発売日まで内容の話はほどほどにしておいてもらえるとありがたいかなあと思います(笑)。