「ガガガ文庫は衰退しました」という意見は衰退しました

 案の定前エントリはいろいろ意見をいただきました。私の書き方が悪くて上手くニュアンスが伝わらなかった部分があるようなので、何点か。

 以上の推論から、USA3さんのガガガ文庫における新人賞受賞作の重みづけはやや重すぎると考えます。

 とのことですが、私は他のレーベルと比較して、ガガガ文庫の新人賞「そのもの」に特別大きな比重を置いているつもりはないです。少なくとも「ガガガ文庫の盛衰は新人賞が握っている!」とかいうようなことは全然思っていません(笑)。

 ただ今回に関しては「新創刊レーベルの、第1回の、それも創刊前から募集を開始し、創刊ラインナップに受賞作が含まれている」というように、非常に特殊な条件がいくつも重なっているわけです。ゆえに私も(他のラインナップについてはある程度「読めている」こともあって)、他の回の新人賞と比較して少々「特別なもの」として捉えていました。私が今回の受賞作に重きを置いて見えるのは、そうした条件を踏まえての、今回限りのものであると考えてください。

 あと新人賞に関していえば、受賞作というのは、レーベル内の1作品であると同時に、「今後応募してくる人へのアピール」という側面もあるわけです。1作品としての重みは、たしかにレーベル内の他作品と比較して特別大きいわけではないかもしれませんが、それとはまた別の意味で、受賞作というのはやはりそれなりに大きな意味を持っているのではないかと思います。


 なお、今回の受賞作に関してもう少し詳しく書くと、良くも悪くも「ライトノベルっぽい」という印象を受けました。とか書くと即座に自分の中から「ライトノベルっぽいって何」という疑問が返ってくるわけですが(笑)、ここでは「ライトノベルを読んで書いた小説」くらいの意味に捉えてください。ライトノベルと呼ばれている作品をそれなりに読んできた身としては、今回の2作は読んでいて驚きや新鮮さがどこにもなかった、というか。

 他レーベルの受賞作を読むと、基本的には「ライトノベルっぽさ」を多く含みながらも、それでもどこかになんかちょっと違う、変な部分があったりするんですが、今回の2作についてはそういうのがまったくといっていいほど感じられず、「いかにもライトノベル」の域を出ていないと感じました。エロゲーライターをぞろぞろ引っ張ってきたり「跳訳」とかやろうとしてみたり、全体として「既存のライトノベルからの脱却」みたいなものがあった中で、新人賞が上記のような状況だったがために、なおさらいまひとつ感が高まり、前回のエントリを書くに至ったという面も、少なからずあるように思います。


 また、前回末尾の「ひとりの選考委員が複数の賞に云々」という部分は、そこまでの「冲方氏の新人賞におけるスタンスに対する私見」を踏まえた上で出てきた側面が大きく、たとえば件の選考委員が桑島由一氏などであれば、ここまであれこれ書くことはなかったと思います。

小説は表現のひとつです。感情の放出です。バランスが良い作品の評価は当然高くなるでしょうし、デビューもしやすいと思います。ですが僕は、もっと心を突き動かすような文章が読みたいです。書きたいことを全力で書いて欲しいです。書きたくないものは書かなくて良いと思います。最近のライトノベルは萌えだべよ、ということで女の子を出す必要はないです。もし萌え萌えな女の子が好きで好きでたまらないのであれば、読んだ瞬間に誰もが興奮して鼻血出して倒れるような女の子を書いて欲しいと思います。本当に表現したいことならば、小説全部が女の子の描写のみでビッシリで構わないと思います。


 平和さんは「撤退の可能性についても危惧」と解釈されていますが、私自身はそこまで具体的にはあまり考えていません。上記の解釈はおそらく「ゆるやかに衰退」云々の部分を指してのものだと思いますが、そこのところはぶっちゃけタイトルと揃えただけであって、ニュアンスとしては、最初からこれでどうすんの、くらいな気持ちです。

 常識的な話をすれば、前回も断り書きを入れたとおり、2冊読んだだけでレーベルの将来を予測するほうがどうか、という話ではありまして。本気でレーベルの今後を考えるなら、少なくとも1年は様子を見る必要があると思います……という、当たり前の結論を述べたところで締めにしたいと思います。