個人的に早いうちに全作品制覇しておきたい作家筆頭

魔王

魔王

 伊坂は『陽気なギャングが地球を回す』『ラッシュライフ』と読んだ時点で「個人的にこの作家に外れはない」とほぼ確信した作家なんだけども、この作品でもその確信が揺らぐことはなかった。政治のありかたがファシズム的なものに変わっていこうとしている架空の日本を舞台に、印象深い小ネタをちりばめつつ、果ては超能力めいた事象も登場させながら、それらを本当に自然に溶け合わせているのは見事のひとこと。もちろんエンターテインメントとして優秀なのは言うまでもない。

 ファシズム憲法を扱っておきながら、「テーマでも小道具でもありません」と言っちゃえるところが伊坂の凄いところだとつくづく思う。早いところ著作をコンプしておきたいところ。