著者が「ラノベ」という略称を「どうにもむず痒くて使っていない」ところに共感

 新城カズマによるライトノベル入門書。

 正直読む前は「このタイミングで出るってことはブームに乗っかっただけのトンデモ本に違いない」とか思っていて、さーていったいどうやって批判してやろうかしらんと思いつつページを開いてみたわけですが、いやはやトンデモ本どころかそれなりにライトノベルを読み込んできた自分にも数多く得るところのあった良書でした。よく考えたら新城カズマって「ライトノベル完全読本 vol.2」冒頭で「反・ライトノベル書評宣言」とか書いてるような人でしたな。もっと早く気づけ自分。すいませんごめんなさい。

 初心者じゃないので入門書としてどうか、というのは判断しにくいので、ライトノベルにある程度慣れ親しんだいまの自分の立場から評価すると、漠然とした印象ではなく、ライトノベルとそれを取り巻く状況にひとつひとつ丁寧に向き合っていく姿勢は見習うべきだと思う。そうして提示された観点もなかなかに面白くて、特に歴史的な流れをイラストの観点から追っていくというやり方は、これまで「ライトノベルにおける歴史」というものを重要視してこなかった自分にも新鮮かつ納得のいくものだった。属性分類、キャラクター紹介あたりは選出内容が気にならないではないけども、なにかが通ればなにかが引っ込む世界ではあることだし、まあこんなもんかと(属性分類はちょっとはっちゃけ過ぎのような気もするけど)。

 とりあえず、ライトノベルについてあれこれ言いたい奴はその前にこれ読んどけ、と言える本だと思う。こうなるとあと必要になってくるのは読者視点の話だと思うので、そっちのほうはそのうち自分で何とかしたいところ。