むかーしむかし、ピートという幽霊がおってなあ……(遠い目)

 怒濤の最終巻一歩手前。

 フィナーレとなるバンクーバー五輪の話を前にして、その下地を作った巻のある第6巻。これまでなかなかスポットの当てられることのなかった他の選手の視点で話を作るという構成は、戸惑いもあったものの新鮮で面白かった。あれだけ綿密に過去を書いたからこそクライマックスが盛り上がったのだとも思うし。そのクライマックス、6者連続の演技の描写についてはもはや言うことなし。1冊の本として見れば面白かったのは間違いなく、不満はない。ただ一点、タズサが主役でないということを除いて。

 結局このシリーズ、なんだかんだ言って主役はタズサなわけですよ。である以上やっぱり彼女が表に出張ってこないとどうにもしっくりこない。6巻もたしかに面白くはあったけど、それは「フィギュアスケート小説としての面白さ」であって「『銀盤』ならではの面白さ」ではないと思うのですな。

 改めてシリーズの流れを追ってみると、タズサがメインになったのは実は最初の3巻(話としては実質2話)だけで残りの3巻は別の人の話なんですな。6巻のふたりはともかく、妹やキャンドルが次に絡んでくるとは思えないし。今回の6巻にしても、次で終わらせるための引きとして慌ててふたりのエピソードを突っ込んだような感がある。それも、タズサのライバルとして強調され続けてきたドミニクはともかく、タズサに追い抜かれた人、くらいのイメージしかなかった至藤響子がここで出てくる理由がよくわからない。

 最終巻は確実に面白くなるだろうけれど、恐らく読み終わって前の巻を思い返してみるとどうにもちぐはぐな感じがすると思う。その最終巻、順当に行けばリアが金、タズサが銀、くらいだろうけど、そこまでの流れも含めてどうひっくり返してくるか。今はそれがわかる日を楽しみに待っていたいと思う。