返信

 気になったところだけ簡単に。

>点数の増加は粗製濫造を招く

>点数の増加は粗製濫造を招く危険性がある

 表現は違いますが言いたいことは同じです。要するに、刊行点数を増加させようと思ったら、必然的に粗製濫造の可能性と向き合わざるを得なくなる。そしてそれは、気をつけてどうにかなるようなものではない。そういうことです。

 気をつけてどうにかなるようなら「この世から粗製濫造なんてものは消えてます」。ご自身で書かれているように「現場にいる編集者の方でさえ、どう指導すればいいのか分からない」のであれば、「粗製濫造が起こらないように気をつける」こともできないはずではないでしょうか。*1


 読者のキャパシティ云々の話については了解しました。ただ付け加えとして、私はライトノベルの消費構造のあるべき姿について考える際、「月に30冊買ってライトノベル全体の動向を把握」しようとしているような層のことを考慮しません。理由としては、読書の本質は「読んで楽しむ」ことであり、ジャンルの動向を把握することがそれに優先するような状態が健全であるとは思えない*2ということ、もうひとつは、月に30冊も買える・買っているような人は昔も今も読者の一部でしかないであろう*3こと、この2点です。


 最後にオタクコンテンツ云々の話。「ライトノベルはオタクコンテンツ*4である」とされていますが、私はそうは思いません。以前のエントリでも書いたように、ライトノベル市場ではいまも中高生が総体として大きな消費層を形成しています。彼らがライトノベルをオタクコンテンツとして消費している、あるいは彼らの消費活動の結果がオタクコンテンツ的特徴を示しているとは私には思えません。

 エロゲーなどは完全にオタクコンテンツですし、アニメは深夜とゴールデンタイムとである程度の分化がなされています。しかし、ライトノベルにおいては、明確な分化や統合は行われていない。ゆえに、「ライトノベル=オタクコンテンツ」という等式は(少なくともいまはまだ)成り立たないと思います。



 関連して追記。

で、"粗製濫造"って誰が決めるのカナ?決めるのカナ?

 それこそまさに今回のやりとりでごまかしている部分でありまして。

 ジャンル小説であれば、そのジャンルの様式を鑑みて識者の判断なりなんなりで質の良否をある程度決められますが、いまさら言うまでもなく「ライトノベル」というくくりにはそういったものはありません。*5私としても、ライトノベルは「消費されるもの」という認識があるので、正直売れれば勝ちだなあ、という気もしないでもないです。

 私個人としては、ライトノベルならではの魅力として「新鮮さ」「驚き」みたいなものを考えているので、「なーんかどっかで見たことあるような作品ばっかりで新鮮さを感じねーなー」と思ったら粗製濫造だという風に自分の中で認識しています。*6

*1:ちなみに編集者まわりの話について書いているエントリはこちらであろうかと思います。

*2:もちろん「読書を楽しむ」という目的が常に第一に置かれているのであれば問題ありません。しかし、月に刊行されるすべての作品が楽しむに値する作品であるとは考えにくいですので、刊行される作品をすべて買うような状況が読者のあるべき姿であるとは言い難いと思います。むしろ、その30冊の中から良作を見つけ出す目を養うことのほうが、読書を楽しむ者のスタンスとしては健全であろうと思います。

*3:参考までに申し上げますと、私が月に買うライトノベル作品の数は20冊いくかいかないかくらいです。

*4:意味合いとしては「オタク的消費行動がなされるコンテンツ」といったあたりであろうかと思います。

*5:できて欲しいとも思いませんが。

*6:たとえば、電撃の大賞作品は昨年まで3年連続でシリアス・ヘビー系でどうにもつまらんと思っていました。なので、今年の『お留守バンシー』大賞受賞は素直に評価しています。