ライトノベルの売れ方について知っておくべきこと

 最近よくライトノベルの、それも売上とか売れ行きについての記事をネット上でよく見かけるのですが、それらを読んでいると、ライトノベルの売れ方についていろいろと勘違いをしている記事がかなりの割合であったりします。売上の正確なデータというのは公開されてはおらず、印象論で語らないといけない部分が多いのは確かですが、それでも些細なこと、たとえば雑誌の特集の組み方だとか、折り込みチラシの配置順だとかを考慮するだけで分析の正確さはかなり高まるはずです。そうしたことに目を向けず、ただただ主観だけで語っている記事が非常に多いように感じますので、ここで一度、ライトノベルの売れ方について最低限これくらいは知っておいて欲しい、というのを書いておこうと思います。

 確たるデータがあるわけではないですが、これについてはほぼ自明でしょう。基本的には「ライトノベル=こどものよみもの」であるという認識はだれもが持っていることでしょうし、いくらライトノベルが認知されたところで、急激に大人の読者が増えたわけでもないでしょう。ライトノベルは、いまも昔も「こどものよみもの」なのです。

 たとえば最近ネットでしばしばライトノベルエロゲーとを比較する記事を見かけるのですが、とりあえずマーケティング等々の観点から語るなら、この点に留意することが必要なはずです。ライトノベルは中高生、エロゲーは基本的に18歳以上のものと、基本的に主な消費者層は重ならないわけですから。

 今後ライトノベルを読んで育った人々がどんどん大人になっていくことから、これから大人の読者も徐々に増えていくと思いますが、それでも中心読者=中高生であるという構図は変わらないでしょう。読者層が分化しこそすれ、逆転することはない、というのが私の見解です。


 で、これに関連することとして言えることが、

  • 「ネットで話題になっている=売れている」ではない

 ということです。まあ、これについてはライトノベルに限った話ではないですが。

 本を読んでネット上に感想や書評をアップする人というのは、もうそれだけで「純粋に読書を楽しむ人」とは意識レベルが異なるわけで、当然作品の好みもライトユーザーとは異なってきます。また、そういう人は大抵それなりに歳を取った「大人」であることが多いので、その意味でもライトノベルの主要読者層からはずれることになります。結果として、ネット上の話題性と売上との間にはずれが生じてきます。

 もちろん「ネット上でも話題になり、かつ売れる」という作品がないわけではありません。そもそも話題になるということは、その作品の存在を知る人が増えるということで、多少売上をアップする効果は当然生まれるでしょう。しかし、それが目に見える形で現れることはそう多くはなく、基本的には話題性と売上には相関関係はない、と考えておくべきでしょう。

  • ノベライズは売れる

 これはデータを見てもらえば一目瞭然です。スニーカーのガンダムノベライズは相変わらず非常に売れていますし、ファミ通FFXIノベライズは13冊で50万部*1という安定した売上を誇っています。もちろん原作の知名度などにもよりますが、少なくとも下手な新作などを出すよりよっぽど安定した売上を出せる存在であることは間違いないでしょう。

 過去をひもといてみても、新規レーベルの最初期は大抵ノベライズがラインナップに組み込まれています。ノベライズである程度知名度、売上を稼いでおいて、オリジナルの人気作が出てくるのを待つ、というのは、新規ライトノベルレーベルの定石と言ってもいい戦略です。



 こんなところでしょうか。私もそれなりに印象から語っているのは確かですので、突っ込みその他は大歓迎です。ただ、その際には印象に説得力を持たせるためのある程度客観性のある例示をお願いしたいと思います。

 ちなみに売れ行きのデータに関してはこちらからある程度知ることが出来ます。少なくとも各レーベルで何が売れているのか、くらいはわかるので、そのあたりに関わる話を書こうとする方はその前に目を通しておくことを推奨します。